クリーンルームとは、空気中における浮遊微小粒子や浮遊微生物が一定の清浄度レベル以下に管理され、室内を用途や目的に応じて適切な環境に保っている空間のことを言います。
簡単に説明すると、小さなゴミや細菌を持ち込ませず、室内においてもそれらを発生させないように温度や湿度を調整し、排気システムなどによって常に空間を清浄に保っている部屋のことです。
クリーンルームは塵やホコリが製品の精度に影響を及ぼす精密機器や、細菌の発生や繁殖を防ぎたい食品などの製造工程で使用されています。
清浄度(クラス)について
クリーンルーム内の空間にどれだけのゴミや細菌が存在しているのかを示す、清浄度(クラス)という指標があります。
JIS規格およびISO規格では、1㎥あたりに含まれる粒径0.1μm以上の粒子の数でクラス分けがされています。
下記はISO規格に基づいて表わしたクラス分けです。
ご覧の通り、製造する製品によって求められる清浄度は異なります。
クリーンルームで働くにあたっては、ここで説明しているような専門的な知識は、理解していなくても全く問題はありません。
作るものによってクリーンルームのレベルが違うんだな、ぐらいの認識があれば大丈夫です。
入室前準備
作業スタッフはクリーンルームへ入る前に、前室にてクリーンウェアに着替えます。
クリーンウェアに着替えた後は、体に付着している髪の毛やホコリを取り除くために、全身に粘着ローラーを掛けます。
その後エアシャワー室に入り、粘着ローラーで除去しきれなかった小さなゴミを払い落とします。
こうした一連の流れの後に、クリーンルームへの入室が可能になります。
このような入念な入室過程のおかげで、クリーンルーム内の清潔な環境を保つことができるのです。
クリーンウェアの種類
クリーンルームは用途や目的に応じて清浄度が異なります。
そしてその求められる清浄度に伴い、クリーンウェアの種類も異なってきます。
クリーンウェアの種類は大きく分けて2種類があります。
▶ 上下一体型のつなぎタイプ
更に細かく分けると、フード無しタイプ(フードの代わりにヘアキャップ着用)やマスクとフード一体型タイプ、シールド付きタイプなどがあります。
簡単に言うと、下の衣服や肌の露出が少ないクリーンウェアほど、高い清浄度レベルに適したものとなります。
また、これらのクリーンウェアの他にも、専用の手袋やシューズを着用することになります。
クリーンウェアの特徴
今までにクリーンルームで働いた経験のない人は、クリーンウェアの着心地が気になるのではないでしょうか?
実際に着用してみるとどのような感じなのか、いくつか特徴を上げてみましょう。
動きにくい?
クリーンウェアを見て「動きにくそうだな」と思った人もいるのではないでしょうか?
クリーンウェアの作りはゆったりとした設計になっているので、動きにくいということはありません。
ただ、「つなぎタイプ」のクリーンウェアは、つなぎを着たことがない人にとっては最初は慣れない感覚がするかもしれません。
しかし生地自体は軽いので、一般的なつなぎ作業服と比較して違和感になれるのも早いと思います。
通気性
全身を覆うクリーンウェアを見て、暑苦しそうな印象を受ける人もいると思います。
実際、下の衣服や皮膚からの防塵性を考慮すると、クリーンウェアの生地は気密性の高いものになってしまいます。
通気性のよいクリーンウェアの開発も進んでいるようですが、やはり他の作業服と比較すると熱はこもりやすいです。
しかし暑いと感じるかどうかは、クリーンルーム内の温度設定や作業内容によって異なります。
食品工場などの温度管理が低めの環境ですと、暑いのとは真逆の体感温度になるでしょう。
また同じ設定温度でも、配膳や材料の補充などで常に動き回る仕事ですと、じっとしたままの作業よりも当然体温は上がります。
メガネが曇る
クリーンルーム内ではマスクの着用が必須になります。
メガネを掛けている人はレンズが曇りやすいので気を付けてください。
特にマスク一体型のクリーンウェアはマスクを二重に付ける形になるので、より曇りやすいです。
出勤前にレンズに曇り止めを塗っておくと安心です。
着脱が不便
他の職場でも「手が汚れるので休憩時間の度に手を洗う」「休憩時間にドライバーを充電しておかなければならない」などの面倒があるかもしれませんが、クリーンルームの場合は着脱についての不便があります。
クリーンルームではクリーンウェアの着用が必須なので、入退室の度にクリーンウェアを着脱しなければなりません。
慣れれば素早く着脱できるようになりますが、面倒臭さはあまり変わらないでしょう。
見た目がダサい
クリーンウェアを見て「ダサくて着たくない」と思う人もいるでしょう。
しかし安心してください。
周囲の他のスタッフもみんな平等にダサいです。
上司も部下も男も女も関係なく、みんなダサくなる不思議な世界です。
慣れてしまえば仕事に忙しくて、そんなことはどうでもよくなります。
化粧禁止!?
「クリーンルームの仕事は化粧が禁止されている」と認識している人も多いのではないでしょうか?
化粧が禁止されている理由は、クリーンウェアやマスクの着用が義務付けられていることからも分かるように、化粧品が肌から剥落して空間を汚染することを防ぐのが目的です。
しかし正確には「クリーンルームは化粧が禁止されている」のではなく「化粧が禁止されているクリーンルームもある」というのが正しいです。
先述もした通り、クリーンルームの用途や目的に応じて、求められる清浄度は異なります。
就業先によっては「化粧OK」の決まりや「化粧は原則NG、しかしクリームタイプの化粧品ならOK」の決まりなど、規則は様ざまです。
クリーンルームの仕事に興味がある人は、事前にこのあたりの就業規則を確認しておくと安心ですよ。
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花粉症が治る??
クリーンルームの仕事を勧められたことのある人の中には「花粉症が治るよ!」とアピールされたことがある人もいるのではないでしょうか?
私も実際、その誘い文句を言われたことがあります。
確かにクリーンルーム内の空間はエアシャワーや排気システムによって、室外よりも限りなく花粉の浮遊量は少なくなっているはずです。
しかしクリーンルームの中で終日生活をするわけではありません。
当然、仕事が終われば家に帰ります。
よって、花粉症が治ることはありません。
しかし花粉症の症状は軽減されます。
1日当たりに吸い込む花粉の量が必然的に違ってくるので、当然と言えば当然ですね。
花粉症以外にハウスダストなどで悩んでいる人も、クリーンルームの仕事に興味があるのなら一度試しに働いてみるのもいいと思いますよ。
指定のペンと紙を使用
クリーンルームの仕事が決まり、仕事用のペンとメモ帳を買いに行こうとしているそこのあなた、
ちょっと待ってください!
クリーンルーム内では繊維屑やインクが飛び散らないように、専用の紙とペンが支給される可能性が高いです。
お気に入りのペンとメモ帳を購入するのは、出勤初日を終えるまで待ってみたほうがいいでしょう。
クリーンルームの環境を具体的に想像するには…?
クリーンルームの仕事を始めてみるかどうかのハードルは、クリーンウェアの着用や清潔な空間で一日中働くことへの、未知の感覚からくるものが大きいのではないでしょうか?
実際に働いてみた私の感想としては、クリーンウェアの着用そのものよりは、マスクや手袋を常時着用していることへの違和感のほうが大きいように感じました。
周囲を汚染しないようにする配慮などについては、汚れるものはそもそも持ち込まないので、入室後に気をつかうことはあまりないかと思います。
そのあたりから思うことは、コロナ禍によるみなさんの日常的な体験の有無についてです。
• ゴム手袋の使用や衛生面に気をつかうこと
こういった行動は、コロナ前であれば普段から行うことはあまりなかったでしょう。
しかしコロナ以降に、そのような長期間に渡る「非日常」の経験をしたことで、ある程度クリーンルーム内で働く際の感覚が想像しやすいのではないかと思うんです。
コロナ前にマスクを常用する習慣の無かった人にとっては、職場でマスク着用を義務付けられた当初は、かなり不便を感じたのではないでしょうか?
そういった感覚を思い返してみれば、クリーンルーム内で過ごす際の体感も、具体的に想像しやすいかと思います。
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